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KOHHはなぜ評価されているのか?-ビートジャックから生まれたオリジナリティ-

この記事を書くきっかけはKOHHがフューチャリングした宇多田ヒカルの楽曲「忘却」のMVがユーチューブで公開されたことに始まる。動画のコメント欄は海外のファンと、日本のファンと、日本のヘイターで溢れかえっていた。日本人はKOHHが客演したことが間違いだったか、正しかったで議論を行っているようだ。

ファンの言い分もわかるし、ヘイターのいう「なにがいいのかわからない」という言い分もわからなくはないのだが、そう考えたら自分自身もKOHHの何が評価されているのか説明することができないな、と思ったのがきっかけだった。

KOHHが世界的に注目されたきっかけ

韓国のアーティストKeith Ape – It G Ma (feat. JayAllday, Loota, Okasian, KOHH)に客演参加し、動画再生数が1ヶ月で100万回再生されたことが海外の評価を高めたきっかけであると言われている。

しかしシーンをリアルタイムでみていたわけではない私は、これがどういった理由で評価を受けたのか全く理解できなかった。

「It G Ma」とは何だったのか?

菊地成孔さんのTBSラジオ番組で『粋な夜電波』第9次韓流最高会議で日韓のラッパーの共作曲、Keith Ape『잊지마 (It G Ma) ft. JayAllday, loota, Okasian, Kohh』についてブロガーのヴィヴィアンさんらと話している文字起こしがありました。当時でもかなり斬新な楽曲だったことがうかがえる。

(ヴィヴィアン)が、参加している曲で。日韓コラボなんですけど、これがまた今年2015年の元日にリリースされたんですよ。もう2015年明けて、いちばん最初にリリースされたのが、もうガッツリ日本語と韓国語半々ぐらいでミックスしてやっている曲で。これがまた、しかも曲のスタイルがいままで日本と韓国になかったような新しいHIPHOPで。

(菊地成孔)そうですね。

(ヴィヴィアン)アメリカには去年ぐらい、ちょっと流行ってきたやつなんですけど。

(菊地成孔)まあ、洋楽ですね。完全な洋楽。

(ヴィヴィアン)そう。で、まだ日本人と韓国人のHIPHOPヘッズたちもぜんぜん聞いていなかったスタイルの曲なので、結構元日からすごい衝撃を与えて。で、日本人と韓国人両方のラッパーが参加してるんで。もう日本の普通のHIPHOPマニアの人たちも、韓国のHIPHOPファンの人たちも、もう同時に、『なんだ、これ!?』ってすっごい騒ぎになって。で、それぞれ、今回すごいよかったのが、日本のHIPHOPファンたちも今回これをきっかけに韓国のHIPHOPに興味を持って。

菊地成孔 日韓合作ラップ Keith Ape『It G Ma』の意義を語る

キーワードとして「韓国人と日本人のラッパーであること」もうひとつは「韓国人と日本人の間に聞いたことのなかったスタイルの曲であること」この2つがあげられる。

だが「聞いたことのないスタイル」である具体的な理由を知りたくてさらに読み進めたところある事実が記載されていた。

「It G Ma」のスタイル

(菊地成孔)まあ、この曲は簡単に言うと、まあ、ネタばらしですけど、パクリですね。なんですけど、それはまあ、敢えてやってるんです。

(ヴィヴィアン)そうなんです。で、もうそのパクリとかも置いておいても、アメリカとかでもすごい高評価で。これはすごいものを日本人と韓国人が作った!みたいな感じで。

という衝撃の事実。元ネタとなったUSのラップはOG Macoの「U Guessed It」という曲とのこと。

グウの根もでないほどそっくりであることがわかる。しかし「It G Ma」は「韓国人と日本人がやった」という点でアメリカでも高い評価を得たという。

ソックリの楽曲がなぜ評価されたのか?

これ以外にもKOHHはUSの最新のスタイルをそのまま曲にとりいれた曲がいくつか存在します。例えばKOHHの「Living Legend」はOG Macoの「Seizure ft. JerZ」に酷似している。

KOHH – “Living Legend

OG Maco – Seizure ft. JerZ

そもそもこれはOG MACOのビートメイカーをプロデュースした曲だという。

M3「Living Legend」はなんとOG MACOのProduceもしているOrange County.C.A.の新鋭ビートメイカーDeedotwillの手によるもの。シンプルながらウワ物とベースラインの迫力が高揚感を与えるドラッギーなトラック上を勢い良く乗りこなすKOHHは今を生き続け、願っている全てを勝ち取る意欲に溢れている。

【FRANK FRIDAY】 KOHH / DIRT

日本的な感覚だと「ただのパクリじゃん!」となりそうだが、そこにはHIPHOPならではの理由があるようだ。このことについてライムスターの宇多丸さんがラジオで解説してくれている。

ビートジャックという手法

同じように歌われたKOHHの『毎日だな』をライムスター宇多丸さんはTBSラジオ『ウィークエンドシャッフル』でこのように解説している。

あの、ちょっと説明しておくと、通常の曲じゃなくてですね、これはカニエ・ウエストという、アメリカというか世界的に非常に有名なラッパー、プロデューサーのカニエ・ウエストの『All Day』という曲のヒップホップの言葉でいう、ビートジャックという形式でございます。

ビートジャックっていうのは要するに、人の曲のトラックを使って、そこに勝手に歌詞を、前の曲を踏まえながら、勝手に歌詞を乗せるという、ビートをジャックするという、そういう形式で作られた曲です。

ライムスター宇多丸 KOHH『毎日だな』を絶賛する

宇多丸さんがいっているカニエ・ウエストの楽曲というのがこちら。

そしてコチラがKOHHの「毎日だな」

このビートジャックに対して宇多丸さんはこのように評しています。

アメリカ、ということは世界のヒップホップであり音楽シーンのいちばん最先端のトレンドを踏まえて。たとえばカニエ・ウエストのラップの仕方、フロウなんかも踏まえて、それを日本語に置き換えて。いるにもかかわらず、その結果、結局グルッと回ってものすごくドメスティックっていうかですね。それこそ、なんだろう?民謡とかさ、与作じゃないですけど。なんかそういうものに通じるような味わいすらあるというかね。

なんかそこが本当、面白いなという風に思いますし。若い世代ならではのね、すごいとっぽいリリックみたいなのもすごく、うらやましく思うところ。あと、途中のすごい変則的なフロウになるところとか、僕は、もうおじさんは、『どうやってこの人はこういうことを思いつくんでしょう?』みたいな感じで。大変うらやましく思う次第でございます。

ライムスター宇多丸 KOHH『毎日だな』を絶賛する

あえて同じ作品で表現することで、結果的にオリジナリティが際立った作品となったということになります。ビートジャックという手法が有名かどうかわかりませんが、USのHIPHOPと日本のシーンの落差を利用し、オリジナリティの提出手法を取り入れたKOHHは感覚が優れていたとしかいいようがない。

そしてこの手法が成功した背景には、KOHHという人間の根底にアーティストとしての圧倒的な存在感が備わっていたからに他ならない。団地で生まれ育ち、薬物中毒の母親を持ち、運送業で働きながらレコーディングを行って世界的なアーティストになったなんて、そんなヒップホップドリーム、下手な小説家でも書かないよなあ。

とりあえず導入編は以上、次回はビートジャック以外の表現方法を調べていきたい。(その前からオリジナリティあったわボケ!等の批判は、今後自分で調べて解決していきたいと思います。)

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